ぐっすりと眠るリョウは本当に疲れている様だった。透ける様に白い肌は青白さを増し、瞼の下には色濃い陰が出ていた。起こすのを躊躇わずにいられない。
「リョウ、着いたぞ。」
オレ達が一緒に暮らしていたマンションの駐車場に着いた。リョウの住む場所へ連れて行きたかったが、オレはリョウのマンションの住所を知らない。
「ん......、寝ていた......。」
「お前、過労だって言われたんだ。何をやっていたんだ?」
何をやっていた?そう聞いて答えが直ぐに返ってくるリョウではなく。そのまま俯いたリョウは「睡眠不足かな。」と低く呟いた。
「部屋、行くだろ?」
車のドアを開けながら、リョウを振り返ることなく言った。ジーンズの後ろのポケットから携帯を取りだし、時間を確認する。午前2時。まだ話す時間はありそうだった。
インスタントのコーヒーを二人分入れ、一つはリョウの前のテーブルに置き、自分はその正面に腰を下ろした。
「オレは、お前が好きだった。」
過去形で切り出したリョウの顔は青白く光り、美しさを一層引き出している様に見えた。
「それで?」
啜っていたカップを態とテーブルに力強く置く。
「もう、終わりにしようよ。オレ達、恋人なんて......、恋愛ごっこなんて、もうお終いにしよう。」
「もう、オレのこと好きなんかじゃない、そう言っているのかよ。恋愛ごっこってなんだよ。」
フローリングにそのまま腰を下ろしている準は、目の前のソファーに腰掛けているリョウを下から掬い上げるような瞳で刺すように睨み付けた。
何を言い出すのか、何となく分かっていた。もう随分と前からオレを避けていたリョウが、オレに話したい事なんて、ろくな事が有るわけないと、気付いていた。
何を思ってそんな事を言い出すのか。
その言葉の裏にある、本心を言えよ。
お前と何年一緒にいると思ってんだよ。お前が、どこで何をしていたかの察しは大体ついているんだから......、なんでオレに本心を言わない。
「終わりにしよう」と言われた言葉よりも、なぜそんな言葉を吐き出さなければならないのか、その理由を教えてくれ。
言葉が、喉まで出かかっているのにその言葉を飲み込んでしまう。今、声を出したら......、リョウのその細い首を絞めてしまいそうだから。
「お前にとって、オレは恋愛ごっこでしか、なかったって言うのかよ、おい......、リョウ。」
喉の奥に物が詰まっている感じがした。苦しくて声が出ない。
コーヒーカップを両手で掴んでいたリョウは、そっとカップをテーブルに戻す。じっとオレの目を見つめるリョウの色素が薄い瞳。覗き込めば、その瞳の中には、多分オレが映って居るんだろう。
「お前は、オレに恋なんてしていなかった。」
そう言うとリョウは瞳を閉じた。
お前は、ただ情に流されただけだろう。
準、もう終わりにしなくちゃ、オレだけこんなに汚いのに、準はそんなにも光が似合うのに、オレを愛しているなんて、そんな風に言うのは今晩限りにして欲しい。
分かって、分かって、もう苦しくて、お前を見ることすら辛いんだ。
そんな目で、オレを見ないで。
きょう葵ちゃんは部屋削除した。