こんにちは、日向夏姫です。
お世話になっているランキングサイトにて、8位と 一桁になっていたので、嬉しくて連日アップです。
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まだ、夜明け前。空が白んでくる少し前に準は、微睡みから覚めた。腕の中にいるリョウを確認して僅かな安心を覚える。後どの位一緒にいられるのだろうかとふと思い、頭を振る。後どの位ってなんだよ。オレは、リョウを捕まえる。
リョウの心が壊れる前に、オレはリョウを捕まえる。
オレにとって、欲しいのははお前だけ。お前をなくす位なら、オレはこの世界に背を向けたって構わない。誰に何て言われたって構わない。リョウを連れて何処かに行ってしまいたい。お前を苦しめるものから救いたいよ。
あの頃に帰れないなら、今から始めたって構わないじゃないか。
お前さえ、それでいいなら……。
「準!開けろ!」
シャワーを浴びていた儘の状態で、激しくチャイムを鳴らす佐上の声に叱咤しながら準はマンションのドアを開けた。
水滴が玄関口にしたたり落ちるのを、気にもせず佐上を睨み付ける様に迎えた。
「話は、もう済んだのか?」
無言の儘、二人は睨み合う。佐上を嫌いな訳じゃなかった。ただ、こいつだって、あの世界の人間で、オレ達を商品としか見ていない。そうじゃなかったら、リョウにあんな事をさせなかっただろう。リョウの首に浮かび上がる紫色のキスマークを見つけた時から、佐上もオレにとってただのマスコミ連中と同じだと認識するに十分だった。ただ、佐上はどこまで知っているのだろう。多分、オレ達の事は知っているのだろう。
オレは、ただ視線だけで、佐上を部屋に上がるように指した。
「準、お前に言いたい事がある。」
玄関口から数メートルしかない廊下を歩きながら、佐上が怒りを堪えた声で言う。
「何?」
腰にバスタオルを巻いたままの姿で準はソファに腰掛け、正面にあるスチール製の椅子に佐上は座った。
「勝手な事をするなと何度言ったら分かる!リョウを病院から連れ出す、事故は起こす、そして、……。」
隣の部屋から、まだ顔色の優れないリョウが姿を現した。ビクッと驚きの表情を隠すことも出来ずにいる佐上をリョウは見つめていた。昨日までのリョウとは違う雰囲気を出しているリョウに気付く佐上を見ているのは、準にとって面白かった。伊達にマネージャーをしている訳じゃないらしい。
「話は、どうなったか……、オレには教えて貰えないのか?」
リョウに腕を伸ばし、自分の隣に座れと催促する準に、従順に従うかのようにリョウが準の隣へと腰を埋めた。まるで、何かを卓越したかのような二人の雰囲気に飲み込まれそうになっていく。
「見れば分かるだろ?それとも今まで通り知らない振りをするんですか?佐上さん。」
くすくすと笑みを湛えながら、目では相手を威嚇する準に、佐上は生唾を飲み込んだ。こいつは、何を決心したというんだ。今更ながらに、準のオーラに気後れしてしまう自分を情けなく思った。
「……、早く、支度をしろ。リョウ、お前は病院に送っていくからな。」
コクンと頷くリョウと、何も言わず、席を立ち、滴る水滴を指先にすくう準の背中を見ているしかなかった。何かを決心した準と、何か違う色を醸しだし始めたリョウを、代わる代わるに見つめた。まだだ、まだ、待ってくれ、準。
お前達が、恋人同士だろうと、愛し合っていようと、別れようと、その雰囲気を壊さないでくれれば、オレはそれで良かった。多分、隠そうとしていた時期もあったかもしれないが、オレは知っていた。リョウを見たときから。準の追う視線を見つけたときから。それで、いいと思っていたさ。
所詮、子供の恋愛ごっこだと。長くは続かないだろうと。
時期が来れば、お互い離れていくだろうと……。
十九のお前達が、隠そうとしている恋愛が、お前達を艶やかに色づけて、人気が出ればそれでいいと思っていたさ。オレを憎んでもいいと思っていた。だが、あの準はどうした!何を決意したというんだ。まだ、行かないでくれと……、オレの中の何かが、お前達を見つけた時と同じ本能が言う。
そして、それをオレはあいつらに確認すら出来ない。
準をスタジオに送り、リョウと二人だけになった佐上は少し緊張していた。
「何を話したか、聞いてもいいだろ?」
前を向いたまま、なるべく感情を出さぬよう気を付けて佐上は話した。
「何を?今更、そんな事に興味を持ったかのように話さないでくださいよ、佐上さん。オレは準に着いて此処まで来た。これからも準の行きたい所に着いて行くつもりですよ。準の望む所へ、ね。」
助手席に身を埋めながら、リョウはまるで遠くにいる存在の様に喋る。
今まで隠していた事を、準に言ってしまった。もうダメだと思ったから、オレは別れることなんか出来ない。準を無くす事なんて、自分から出来るわけがないとイヤって言うほど分かった。それが出来るなら、もっと早くにしていた筈だった。
準に、全部話して話してしまえば、楽になるなんて思っていた訳じゃない。準に考える好きも与えず話したから、準はこれからどうするんだろう。準は、どんな答えを出すんだろう。
「お前のせいじゃない。」そう言ってくれて、嬉しかった……。誰かに、そう言って貰いたかった。ずっと……。ずっと、苦しかった。
準が好きだよ。でも準の言葉を受け入れる事が出来ない。そんな自分が嫌いなんだ。準の様に真っ直ぐ「好きだ」と言えない。
準は、怖くないのだろうか。
準は、迷ったりしないのだろうか……。
こんなオレでも、まだ愛しているって言えるんだろうか……。
怖い。オレは怖い。
まだ、信じることなんか、出来ないよ。
隣で、運転をする佐上を見上げた。
オレは、この世界が割と好きだった。好きだった、と過去形で思う自分に苦笑する。
佐上さんは、オレにとっても、準にとっても、まだ大切な存在だと、佐上の顔を見て思う。オレ達をトップに立たせてくれた。そう……、例えどんな手を使っていたとしても、この人は準の夢を叶えてくれた。オレは、準の夢に付いてきた。今までも、そしてこれからだって、準がオレを必要としてくれるなら、オレは準の隣に立ちたい。
「準の、望む場所へ、オレ達を連れて行ってくれて、ありがとう。佐上さん。」
黙り込んだまま何も話さなくなったリョウに、いきなり話しかけられた佐上は、酷く驚愕した表情を浮かべた。
「何を、何の事を言っているんだ?……、それは、オレに対する嫌みなのか?」
ただ、ある意味本心を言ったまでだよ。佐上さん。
冷や汗をどっと額に浮かべている佐上を、可笑しく感じた。この男は、もしかして恐れているのかもしれない。
でも、何に?もしかして、準に?
「大丈夫、あのことは準には言ってないから。殺されたく無いでしょう?準に。」
案の定、佐上が顔色を変えて、リョウの顔を覗き込んだ来た。
ああ、そんなことを気にしていたのか。
そう思ったら、無性に可笑しさが込み上げてきた。なんて馬鹿なんだろう。愚かなんだろう。オレが?この人が?
くすくすと笑っていたかと思うと、いきなり大声でリョウは笑い出した。耳鳴りがするほどの大声で笑うリョウを見つめていると、あの時の記憶が遡っていった。
「準に、そんな事させないで。お願いだから、佐上さん。オレが代わりに行くから、オレは、大丈夫、慣れているから。」
そう言って自分から服を脱ぎ、細い腕をオレの首に巻き付けて来た、十八のリョウ。
「準に、そんな仕事をさせないで。アイツはそんな事出来ない。男に身体を任すことなんか出来ない。お願いだから、そんなことは、これからオレだけにして。佐上さんの言うことなんでも聞くから……。お願い、そして、このことは準には内緒だよ……。秘密にしてね……。」
泣きそうな目をした十八のリョウ。
オレが、間違っていたのか……。
日向夏姫がサービスしたの?