「カーーーーーット!」
ADの声によって、焚かれていたスモーク、サーチライトが消え、ドラマの最終カットがこれで終了した。
カットの声を聞いても、準はその場から暫く動く事が出来なかった。震える指先が硬直したように堅くなり、金属で出来た金網を握りしめた儘指を開くことすら出来ない。外気に晒された涙は冷たく冷え頬を伝っていた。コレは、ウソなんだと頭では理解していても、役の中の自分と現実の自分との境目が無くなったように、準を縛り付けていた。
「リョウ。リョウ、起きろよ」
可笑しいほど、声が動揺している。
スタントは使いたくない、と言い張って、リョウは自分の背丈の倍はあるかと思われる柵から落下したのだ。万が一の為に、掘った地面の下にはマットが引かれその上に土を掛けてあるが、打ち所が悪ければ、重傷を負う事だってあり得た。
誰も、声を出さない。誰も身動きが出来ずに、リョウを見ていた。
仰向けになったままのリョウの身体が、ゆっくりと起きあがる。髪の毛についた枯れ葉を二三度頭を振って払いのける仕草に、回りのスタッフらから、安堵の声が漏れ、拍手が起きあがった。
「大丈夫か?起きあがれるか?」
救急班が駆け寄り、リョウに毛布を差し出して頭からすっぽりとリョウを覆い隠した。
「あ、大丈夫です」
小さく答える、リョウの声が聞こえた。かさかさと枯れ葉を踏む足音をさせ、リョウが、金網に近づき、準の前に屈み込む。
「大丈夫だから、そんな顔するなよ。みんな見ている」
金網に食い込む程強く握られている準の手の上から、リョウの手が重ねられた。
回りには沢山のスタッフがいても、その様子をただ見ているしか出来なかった。このような雰囲気を自然に出す二人に、話しかけることすら、誰も出来はしないのだ。
「リョウちゃん!凄かった!大丈夫だった?」
安藤真喜子が、自分の顔の三倍はあろうかと思われる大きな花束を抱えて、近づいてくる。
「クランクアップ、おめでとう。リョウちゃん」
「ありがとう、真喜子ちゃん」
真喜子の姿を見つけると、リョウは視線だけで合図を送ってくる。準の様子を見て欲しいと目で訴えてくる。
分かっているから、と頷くと、一度だけ準を振り返るリョウは、そのままスタッフと監督の所まで歩いて行ってしまった。こんな時、一番準の側にいたいのではないかと思うけど、彼には彼のこの世界でのやり方がある。人前で、準に必要以上に接触してこないリョウ。
準を一瞬だけ見つめるリョウの瞳に、真喜子は「早くリョウちゃんを」と願わずにいられない。
「準、早くこっちに回って来て。撮影があるんだって!」
スチール撮影の準備が始まる事を、準に伝えると、真喜子が準の居る側に急ぎ足で回り込み準の腕を取った。
「準......」
「分かってる。大丈夫だから」
不安な表情を浮かべる真喜子に引きつった笑みを見せる準は、もどかしそうに指を外すのに苦戦していた。やっと剥がれる指先は、震えを伴って紫色に変色していた。
そっとその指を包み込む真喜子の手の温かさに、顔を上げる。
「じっとしていて。早く涙を拭きなさいよ」
騒がしく、撮影が始まろうとしていた。
「最高の演技を見せてくれて、ありがとう。あんたって、やっぱ凄いね」
「......。フォロー、ありがとうな」
「あんまし、冷や冷やさせないでよ」
ふふ、と不適な笑いを残して、準は照明の当たる場所へと帰っていった。
ADの声によって、焚かれていたスモーク、サーチライトが消え、ドラマの最終カットがこれで終了した。
カットの声を聞いても、準はその場から暫く動く事が出来なかった。震える指先が硬直したように堅くなり、金属で出来た金網を握りしめた儘指を開くことすら出来ない。外気に晒された涙は冷たく冷え頬を伝っていた。コレは、ウソなんだと頭では理解していても、役の中の自分と現実の自分との境目が無くなったように、準を縛り付けていた。
「リョウ。リョウ、起きろよ」
可笑しいほど、声が動揺している。
スタントは使いたくない、と言い張って、リョウは自分の背丈の倍はあるかと思われる柵から落下したのだ。万が一の為に、掘った地面の下にはマットが引かれその上に土を掛けてあるが、打ち所が悪ければ、重傷を負う事だってあり得た。
誰も、声を出さない。誰も身動きが出来ずに、リョウを見ていた。
仰向けになったままのリョウの身体が、ゆっくりと起きあがる。髪の毛についた枯れ葉を二三度頭を振って払いのける仕草に、回りのスタッフらから、安堵の声が漏れ、拍手が起きあがった。
「大丈夫か?起きあがれるか?」
救急班が駆け寄り、リョウに毛布を差し出して頭からすっぽりとリョウを覆い隠した。
「あ、大丈夫です」
小さく答える、リョウの声が聞こえた。かさかさと枯れ葉を踏む足音をさせ、リョウが、金網に近づき、準の前に屈み込む。
「大丈夫だから、そんな顔するなよ。みんな見ている」
金網に食い込む程強く握られている準の手の上から、リョウの手が重ねられた。
回りには沢山のスタッフがいても、その様子をただ見ているしか出来なかった。このような雰囲気を自然に出す二人に、話しかけることすら、誰も出来はしないのだ。
「リョウちゃん!凄かった!大丈夫だった?」
安藤真喜子が、自分の顔の三倍はあろうかと思われる大きな花束を抱えて、近づいてくる。
「クランクアップ、おめでとう。リョウちゃん」
「ありがとう、真喜子ちゃん」
真喜子の姿を見つけると、リョウは視線だけで合図を送ってくる。準の様子を見て欲しいと目で訴えてくる。
分かっているから、と頷くと、一度だけ準を振り返るリョウは、そのままスタッフと監督の所まで歩いて行ってしまった。こんな時、一番準の側にいたいのではないかと思うけど、彼には彼のこの世界でのやり方がある。人前で、準に必要以上に接触してこないリョウ。
準を一瞬だけ見つめるリョウの瞳に、真喜子は「早くリョウちゃんを」と願わずにいられない。
「準、早くこっちに回って来て。撮影があるんだって!」
スチール撮影の準備が始まる事を、準に伝えると、真喜子が準の居る側に急ぎ足で回り込み準の腕を取った。
「準......」
「分かってる。大丈夫だから」
不安な表情を浮かべる真喜子に引きつった笑みを見せる準は、もどかしそうに指を外すのに苦戦していた。やっと剥がれる指先は、震えを伴って紫色に変色していた。
そっとその指を包み込む真喜子の手の温かさに、顔を上げる。
「じっとしていて。早く涙を拭きなさいよ」
騒がしく、撮影が始まろうとしていた。
「最高の演技を見せてくれて、ありがとう。あんたって、やっぱ凄いね」
「......。フォロー、ありがとうな」
「あんまし、冷や冷やさせないでよ」
ふふ、と不適な笑いを残して、準は照明の当たる場所へと帰っていった。
葵ちゃんが笑みはデザインー!