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この感情が、「愛」なのか。オレはリョウに「恋」しているんだうか。そんな事はどうでもいいと思った。オレはリョウが欲しかった。コレを「愛」と呼ばないのなら、何だろう。
リョウの瞳の中に自分がいない。リョウが、オレを見ない。リョウがオレを必要としない。
そんな事が起こるなんて、考えもしなかった。
単なる我が儘なのかもしれない。そうさ、オレは、我が儘でいい。オレが我が儘でリョウが自分のものになるなら、どんな手でも使おう。
そう、思った。
リョウが、オレを嫌いになるなんて考えたくもない。そんなことが実際に起こる事すら、想像もそたくない。オレ達お互いが必要なはず。そうだろう?リョウ。お前だってオレが必要なはずだ。
素直にそう言ってくれ。
無理矢理抱いた訳じゃないだろう?それとも、またオレの我が儘だと思って、抱かれているのか?
初めて抱いたあの日、口づけたリョウの唇は、少し冷えていた。掴んだ青いシャツを握るリョウの指先が、白くなるほど力が込められていた。そんな事しか覚えていない。
何年も一緒にいたから、ずっと一緒だったから。そんな事で抱いたんじゃないよ。
お前は、オレのものだかから。誰にも取られたくなかったから。オレだけのリョウだから。
オレが、お前を守りたかった。
二度と、オレの前で涙をためて、でも泣きもせず、「お前のせいじゃない。」なんて言葉を言わせたくないんだ。どんな事言われた?どんな事された?オレ以外の人間に、お前を触れさせたく無い。これが愛じゃないんなら、どうやって愛を証明すればいいんだ。
それまでリョウの肉体を欲した事は、無かった。リョウに欲情した覚えだってない。
抱く、という行為を想像しなかった三年間。この世界に入ってから初めて、男が男を欲するという行為が割と当たり前だと初めて知った。仕事の付き合いで、酒の席に同席しなければならない事すら、吐き気がした。オレは、ただ歌いたかっただけ。そんな、ホステスみたいな事、なんでしなくちゃなんねえの?よく、リョウにこぼしたもんだった。
「そういう世界に入ってきたんだから、有る意味しゃーないんじゃねえの?」
そう言うリョウに腹立つ気持ちすらあった。
「お前は、出来るの?出来んのかよ!」
怒鳴るオレに対して、リョウは冷めた笑いをオレに向けていた。「出来ると思ってんの?」オレから視線を外し、バックに荷物を仕舞いながら呟いたリョウ。
リョウだって、出来るとは思えなかった。外見はいつまでたっても綺麗なリョウは、自分の女見たいな顔を嫌っていた。
初めて会ったときから、綺麗なリョウ。オレが、初めに見つけた。気になって、しかたなかった。だからオレが、リョウを誘ってこの世界に飛び込んできた。二人で、曲を作って、詩を書いて、歌った。バイトした金はたいて自分たちでインディーズを出したのが切っ掛けで、スカウトされて、コンテストに出て……、オレがリョウを誘わなければ、オレ達普通の大学生活出来ていたかもしんない。
実際、リョウは大学受験を希望していて……、地元の大学の推薦が決まっていたのに、オレが無理矢理辞めさせた。
「一緒に、東京に出よう。」
夜中、突然リョウの家に行き、そう言った。
「どうしても、やってみたい。お前が一緒じゃないとダメなんだ。」
そうさ、本心だった。
「オレ、大学決まってんの知っててそう言ってるんだよな。」
「お前と、一緒にやりたい。」
くすっと笑って、「いいよ。」と言ったリョウの表情を思い出す。両親の反対を押し切って、まるで駆け落ちみたいにして、右も左も分からないここに出てきた。
いつも、オレ達ふたりだった。
だから、リョウに対する気持ちに気づくのが、遅かったんだろうか。いや、気付きたくなかったんだ。多分。
だから、抱くことに対してもそれほど抵抗はなかった。それより、拒絶されたらどうしようと思った。でも、リョウは、オレを拒まなかった。
何度もキスを繰り返す。頬に、首に、肩に。そうやっているうちに、自分の体の中心が熱く堅くなっていく。
軽くリョウの耳を噛んだ。「リョウ、抱きたい。オレのこと、厭か?」
黙った儘、俯いて何も言わないリョウ。何も言わないのは、厭じゃないって事は、長年の付き合いで了解している。オレ達だけの会話。俯いているリョウの顎を捉え自分に向かせる。
「なに、むくれているんだよ。」
「むくれてなんか。」
オレの手から逃れ、そっぽ向くリョウを抱きしめた。
「離れて行くなよ。オレのリョウでいろよ。」
「だって、オレ……、いいの?」
顔を逸らしたまま、リョウが呟いた。
「何が?」
「オレ、こんなに……。」
「誰かにつけれられたこんな傷、オレが消毒してやる。忘れろよ。オレが、忘れさせてやる。」
傷ついたリョウの体は、痛々しかった。そっと、癒着しているケロイドのような小さな傷口を指でなぞった。小さく息を止めるリョウの呼吸。
「ゴメンな。オレがお前を誘ったりしなければ……。」
「同情なのか?」
「違う。お前を守りたいと思っていたのに。」
「オレは、自分で決めた事だ。同情なら……。」
気の強いオレのリョウの口を塞いだ。「同情なんかじゃねえよ。」ただお前を失いたくないだけだ。
どう言ったらいいのか、分からずに、リョウの体に自分の高鳴った固まりを押しつけていた。
崩れ堕ちる瞬間見えたのは、リョウの部屋から見える星のない夜空。ほんの数メートル離れただけの部屋なのに、自分の部屋から見る景色とはまるで違った様に映っていた。
これが愛じゃないって言うんなら、何を愛だっていうんだ。
きょう葵ちゃんが息された!
でも、見え隠れした?