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それでも月の夜には愛が降る 13
2007年11月26日 日向夏姫 | 個別ページ | コメント(5)
「泣いてなんか、いない。」
止めどなく流れる涙は、頬を伝って鼻筋まで来ているのに、リョウはそう言う。流れ落ちる涙を拭おうともせず、立ちつくした儘、絶望を瞳に湛えながら準を見つめている。
「お、まえ......。」
そんな顔するなら、なんでオレに別れを言った。なんで、そんな言葉を口にしなくちゃなんねぇんだよ。オレは、どうしたらいいんだ。
どうしたらいいのかなんて、こんな状況で、抱きしめる以外の何も浮かびはしない。ただ、リョウを強く抱き寄せた。準より幾分小柄なリョウの背中を、きつく抱きしめる以外、何も出来はしなかった。
「準......。」
「何も言うなよ。嘘なんだろ、またお前の下手くそな嘘だったんだろ?」
リョウの背に躊躇いがちに回されたリョウの腕、力無くしがみついてくるリョウの指先に、また準も狂おしい感情に囚われていった。
何故、いつもオレはリョウの心まで読み取ってあげることが出来ないのだろうか。守りたい、愛したい、自分の物にしたい。そんな感情は現実に直面したときには何も役には立たなくなっていく。もっと、強くなりたかった。誰かからではなく、何かからではなく、怯えているリョウの中身からその心の中にある迷いから、オレはリョウを守りたいと思った。
無くしたくはない、ココにいるのは、オレの半身。お前が居なくなったら、オレはオレでなくなる。
「だって、オレは準に言っていない事が沢山ある。言わなくてもいいことだと思っていたから、今まで黙っていたけど、もう、限界なんだ......、だって、お前を見ていると、辛くなってくる。オレは、自分の汚さに。なあ、準!お前、オレを愛しているって言うけど、オレはそれすら信じられなくて、愛なんて、好きだとか嫌いだとか、そんな感情は......!」
今までにこんな苦しそうな表情をしてオレに食ってかかるリョウを、見たことがなかった。両の拳を準の胸に叩きつけ、涙でぐちゃぐちゃになりながら、まるで助けを求める様に準にすがる。
「何が、言いたいんだ。聞くから、全部、聞くから、リョウ......。」
叩きつける両手を掴み、準はリョウの目を捉える。「もう、離さないから、オレは、お前を、離したくないから。」嗚咽を漏らし、睨み付けてくるリョウの唇にそっと口づけた。
「なんでも、話してみろよ。オレは、今までお前を傷つけてばかりいた。口先だけで愛しているって言っているって、言われれもしゃーないし。お前がオレを信じられないのは、オレのせいなんだろ。自分を汚いないなんて、言うなよ。」
キスを落としたリョウの唇を見つめながら、そう言った。艶めかしく光るリョウの唇は、ただ合わせただけの口づけなのに、準の欲望に火を点けるにはあまりにも十分すぎる。
涙が伝う頬に唇をつけ、暖かな舌で吸い取る様に、舌を這わす。両手でリョウの額を掻き上げ、耳殻に沿って口づける。柔らかなリョウの耳を愛おしく舐めあげていく。それに応えるようにして、軽く、リョウが声を漏らしていった。
壁に背をつけたリョウの腰を引き寄せ、準は自分のはち切れそうな高鳴りへと誘い込むように擦り合わせていく。
「オレが、欲しいのか?」
濡れた瞳で、リョウが準を見上げる。
「何時だって、どんな時だって、お前が欲しいさ。」既にリョウのシャツのボタンに手を掛けている準は、指の動きを止め、首を少し傾け溜息を漏らした。
「オレのこと、好きだろ?」
傾けた横顔の儘、リョウに上目遣いの視線だけを向け、およそ準らしくない声色で躊躇いがちに言う。
「好きだ......、準。オレを抱いて。」
一瞬、信じられないと言うような顔をした準は、直ぐさまリョウの正面に向き直り、満身の笑みを浮かべた。
「もう一度、言ってくんないかな?リョウ、今の台詞。」
「......、好きだよ、オレを抱いて......。」
聞きたかった、リョウからの言葉。今までだって一度も聞いた事がなかった。
「オレも、愛している。大好きさ、お前の事。」
俯いたまま、オレを見ないリョウを、抱きしめた。何度でも、きつく抱きしめた。リョウの手をとり、ベッドルームへと誘う。冷たいリョウの手を感じながら。
薄暗い部屋の中で、リョウの艶声だけが聞こえる。
「準、ねえ、男を抱いたのは、オレが初めて?」
責め立てられながら、喘ぎ声を喉に詰まらせながら、絶え絶えにリョウが準の目を見る。
「な、なに?......、男はお前が初めてかって?なに言ってんだよ。ここ、......、感じるんだろ?もっとお前の声が聞きたい。さっきみたいに、正直な声を聞かせろよ......。」
ゼリーでヌルヌルとさせた指を、リョウの後ろに突き立てた。一本、二本と、くねらせた指をリョウの堅い後ろへ入れ、抜き差しを繰り返していく。全身に走る快感を、リョウの身体は正直に語っていた。堅い蕾は、柔軟さを増していく。
「オレ、お前が初めてじゃ、あ......。始めてじゃ、ない。」
ぴたりと、準の指の動きが止まった。
「今更、あん時のことなんか持ち出すな。」
ぐいっとリョウの腰を自分に引き寄せ、起きあがろうとするリョウの上半身を防ぐかのように自分の身体をリョウの上に被せてきた。
お互いの顔は僅かに、数センチという距離にあった。ほんのりと肌を蒸気させたリョウの皮膚は熱を帯び、桜色に染まっていた。
「あの時が最初じゃないって言っても、準はオレが好きだと言えるのか?」
「......!な、なんの話だ......。」
「オレ、物心ついたときから既に、男に身体を触られる経験をしていたんだ。最初にオレをイカセてくれたのも、男だったよ。こんな風にね。」
目の前にあったリョウの顔がすっと、準の身体の下へと回り、中途半端に立ち上がった準の物を握ると、口の中へと滑り込ませた。ねっとりとしたリョウの舌が、準を包み込み、慣れた感じで舐め上げていく。
「やめろ、リ......、リョウ。」
リョウが、自分から進んで準のモノをくわえ込むなんて、今までだって無かった。丹念に舐め上げ、吸い上げるリョウの口から自分のモノが見え隠れする様に、ゾクゾクとせずにはいられない。四つん這いになっている準の下へと身体をずらしたリョウは、両手で準のモノを大事そうに掴み、執拗に責め立てていた。
「リョウ、......出る......。」
ぐっと腰をリョウの口へと押し込む様な形で、準はリョウの口中へと熱い精液を吐き出した。
力尽きてベッドへ仰向ける準をリョウが見下ろしている。
「こんな風に、男を行かせることだって、準が初めてじゃないんだ。」
飲み込んだ準の精液を手の甲で拭っているリョウを、睨み付ける準の瞳。
「どう?オレの事なんか何も知らなかっただろう?」
何が言いたくて、リョウがこんなことをしたのか。ただの愛し合う行為ではない。今オレにした事は、リョウがオレの愛に応えたからじゃない。それ以外の、何を分かればこいつは満足するのか。
「お前が、オレ以外の男と寝たっていうのを、わざわざオレに言いたかったのか?」
黙った儘、顔をこちらに向けようともしない。
「オレに出会う前から......?」
微かに頷くリョウを見て、胸に熱いモノが込み上げて来るのを止められなかった。リョウが言いたいことって、こんなことなのか?
「嫉妬するオレが見たかったのか?」
リョウ顔にかかる髪に触れようと準が手を伸ばしたが、リョウがそれを振り払う。
「違う!オレはオレが望む前から、こんな風に男とセックスしていた。準には知られたくなかった。こんなオレの過去なんて。」
「じゃ、どうして......?本当はもっと違う事が言いたいんじゃないのか?リョウ。」
振り返ったリョウの顔を、オレは一生忘れないだろうと思った。
苦悩している、リョウの顔。本当は、口にもしたくなかっただろう過去を、言葉にして話そうとする瞬間の、リョウの表情を。言葉にしてしまえば、忘れていた、忘れたかった過去の事まで想い出し、その時の空気まで、皮膚に感じる事が出来てしまうはずだから。
「オレは、小さい頃から、そうだったんだ。近づいてくる大人は、オレに触り、オレに口づけ、『好き』だと言う。そして『誰にも言っちゃいけない、秘密だよ』と言う。オレにとって「好き」は苦痛と誰にも言えない秘密で一杯になっていった......。」
初めて聞くリョウの過去に、ただ呆然とするだけで、何も言葉は出てこなかった。リョウの震える睫を見ていた。
----------- つづく
お久しぶりでございます。
日向夏姫です。
このように、連載中の小説のあとがきみたいなものを書くのは、初めてなのですが。。。
いかがでしたか?
なんて、聞くのも恥ずかしいのですが~~~っ!
毎日、カウンターは更新されていて、沢山の方が読みに来ていただいているようで嬉しい限りです。
今日はじめて、このサイトへ訪れた方の大半は、「もう、来ねぇよ」と心の中で思っていらっしゃるのではないでしょうか。申し訳ないです。
そうでない方も、いらっしゃるかもしれませんが、(希望!)
このように何の反応もない小説サイトも珍しいのではないかとおもう今日この頃。
何か、一言「読んだよ」とでも残しておいて下さると、更新頻度も上がるかと思います。
何卒宜しくお願いいたします。
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コメント(5)
BlogPetの葵ちゃん :
無視するの?
ソラ :
読みましたぁ
切ないぃっ!
すごくよかったです。
続き楽しみにしてます♪
日向夏姫 :
ソラさん。
ありがとう~~!
切ない系というか、痛い系というか、いつもこんなんで申し訳ないのですが、こういうのしか書けないんで。
同士歓迎です。
続き、アップしますね!
ありがとうございました。
mana :
めっちゃいいです♪
もうキュンとしました☆
はやくつづきが読みたいです~☆
お願いします♪♪
日向夏姫 :
manaさんへ
感想ありがとう~~!
続き、すみません。またもやサボっておりました。
いや、ほんと、すみません。
すぐさまアップします。
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