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それでも月の夜には愛が降る 4

2007年8月 5日 日向夏姫 | | コメント(1)


 この感情が、「愛」なのか。オレはリョウに「恋」しているんだうか。そんな事はどうでもいいと思った。オレはリョウが欲しかった。コレを「愛」と呼ばないのなら、何だろう。
 リョウの瞳の中に自分がいない。リョウが、オレを見ない。リョウがオレを必要としない。
 そんな事が起こるなんて、考えもしなかった。
 単なる我が儘なのかもしれない。そうさ、オレは、我が儘でいい。オレが我が儘でリョウが自分のものになるなら、どんな手でも使おう。
 そう、思った。

 リョウが、オレを嫌いになるなんて考えたくもない。そんなことが実際に起こる事すら、想像もそたくない。オレ達お互いが必要なはず。そうだろう?リョウ。お前だってオレが必要なはずだ。
素直にそう言ってくれ。
 無理矢理抱いた訳じゃないだろう?それとも、またオレの我が儘だと思って、抱かれているのか?
 初めて抱いたあの日、口づけたリョウの唇は、少し冷えていた。掴んだ青いシャツを握るリョウの指先が、白くなるほど力が込められていた。そんな事しか覚えていない。
 何年も一緒にいたから、ずっと一緒だったから。そんな事で抱いたんじゃないよ。
 お前は、オレのものだかから。誰にも取られたくなかったから。オレだけのリョウだから。
 オレが、お前を守りたかった。
 二度と、オレの前で涙をためて、でも泣きもせず、「お前のせいじゃない。」なんて言葉を言わせたくないんだ。どんな事言われた?どんな事された?オレ以外の人間に、お前を触れさせたく無い。これが愛じゃないんなら、どうやって愛を証明すればいいんだ。
 それまでリョウの肉体を欲した事は、無かった。リョウに欲情した覚えだってない。
 抱く、という行為を想像しなかった三年間。この世界に入ってから初めて、男が男を欲するという行為が割と当たり前だと初めて知った。仕事の付き合いで、酒の席に同席しなければならない事すら、吐き気がした。オレは、ただ歌いたかっただけ。そんな、ホステスみたいな事、なんでしなくちゃなんねえの?よく、リョウにこぼしたもんだった。
 「そういう世界に入ってきたんだから、有る意味しゃーないんじゃねえの?」
 そう言うリョウに腹立つ気持ちすらあった。
 「お前は、出来るの?出来んのかよ!」
 怒鳴るオレに対して、リョウは冷めた笑いをオレに向けていた。「出来ると思ってんの?」オレから視線を外し、バックに荷物を仕舞いながら呟いたリョウ。
 リョウだって、出来るとは思えなかった。外見はいつまでたっても綺麗なリョウは、自分の女見たいな顔を嫌っていた。
 初めて会ったときから、綺麗なリョウ。オレが、初めに見つけた。気になって、しかたなかった。だからオレが、リョウを誘ってこの世界に飛び込んできた。二人で、曲を作って、詩を書いて、歌った。バイトした金はたいて自分たちでインディーズを出したのが切っ掛けで、スカウトされて、コンテストに出て……、オレがリョウを誘わなければ、オレ達普通の大学生活出来ていたかもしんない。
 実際、リョウは大学受験を希望していて……、地元の大学の推薦が決まっていたのに、オレが無理矢理辞めさせた。
 「一緒に、東京に出よう。」
 夜中、突然リョウの家に行き、そう言った。
 「どうしても、やってみたい。お前が一緒じゃないとダメなんだ。」
 そうさ、本心だった。
 「オレ、大学決まってんの知っててそう言ってるんだよな。」
 「お前と、一緒にやりたい。」
 くすっと笑って、「いいよ。」と言ったリョウの表情を思い出す。両親の反対を押し切って、まるで駆け落ちみたいにして、右も左も分からないここに出てきた。
 いつも、オレ達ふたりだった。
 だから、リョウに対する気持ちに気づくのが、遅かったんだろうか。いや、気付きたくなかったんだ。多分。
 だから、抱くことに対してもそれほど抵抗はなかった。それより、拒絶されたらどうしようと思った。でも、リョウは、オレを拒まなかった。
 何度もキスを繰り返す。頬に、首に、肩に。そうやっているうちに、自分の体の中心が熱く堅くなっていく。
 軽くリョウの耳を噛んだ。「リョウ、抱きたい。オレのこと、厭か?」
 黙った儘、俯いて何も言わないリョウ。何も言わないのは、厭じゃないって事は、長年の付き合いで了解している。オレ達だけの会話。俯いているリョウの顎を捉え自分に向かせる。
 「なに、むくれているんだよ。」
 「むくれてなんか。」
 オレの手から逃れ、そっぽ向くリョウを抱きしめた。
 「離れて行くなよ。オレのリョウでいろよ。」
 「だって、オレ……、いいの?」
 顔を逸らしたまま、リョウが呟いた。
 「何が?」
 「オレ、こんなに……。」
 「誰かにつけれられたこんな傷、オレが消毒してやる。忘れろよ。オレが、忘れさせてやる。」
 傷ついたリョウの体は、痛々しかった。そっと、癒着しているケロイドのような小さな傷口を指でなぞった。小さく息を止めるリョウの呼吸。
 「ゴメンな。オレがお前を誘ったりしなければ……。」
 「同情なのか?」
 「違う。お前を守りたいと思っていたのに。」
 「オレは、自分で決めた事だ。同情なら……。」
 気の強いオレのリョウの口を塞いだ。「同情なんかじゃねえよ。」ただお前を失いたくないだけだ。
 どう言ったらいいのか、分からずに、リョウの体に自分の高鳴った固まりを押しつけていた。
 崩れ堕ちる瞬間見えたのは、リョウの部屋から見える星のない夜空。ほんの数メートル離れただけの部屋なのに、自分の部屋から見る景色とはまるで違った様に映っていた。
 これが愛じゃないって言うんなら、何を愛だっていうんだ。




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BlogPetの葵ちゃん :

きょう葵ちゃんが息された!
でも、見え隠れした?

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