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タイムアウト 7
「教えてやるよ。知りたいだろ。本当のところ・・・」
そう言った瑞樹の声がまた、木霊した。
気にしているのは、お前だろ。
抱きしめられて、唇を奪われた過去を拭い去りたいのは、お前だったんだろ。
「知られたくなかったんか?」
瑞樹がオレのどんな言葉を待っているのか計り知れないけど、今の目の前にいる瑞樹はオレの言葉に救いを求めている様に感じられてならなかった。
「どう、思った?」
オレの目を見ずに言う瑞樹。救いを求めているのは、本当にオレになのか?
知らせたいけど、知られたく無かった自分の過去。
確かに、あれは、お前のせいじゃない。お前がその事で傷ついていたんなら……。
「お前は、アイツを気に入ってたんやろ。でもアイツと同じ感情でなかった。アイツを受け入れられなかったんは、お前のせいじゃない」
「本当に、そう思うか?」
確かに、嘘じゃない。可哀想だと思う。あの過去に縛られていたのだとしたら、心に傷を負ったのはあの教生じゃなく、むしろ、瑞樹だと思った。
「オレ、好きだった。でも、それは愛とか恋とかじゃねえよ。友達だと思ってたんだ」
また、瑞樹が苦痛に歪んだ顔をした。
いつもオレを振り回してばかりいる瑞樹とは思えなかった。
「とにかく、着替えようや」
瑞樹の爪にまで食い込んでいる泥や、草木のかけら達は上がってきた気温のせいか瑞樹の体温のせいなのか、ひび割れてきて瑞樹の皮膚を醜く覆って来てい た。自分の姿を気にしている風でも無さそうにしていたはずの瑞樹に「帰ろう」とそっと腕を伸ばし促した。コクンと頷くだけ瑞樹から握っている包丁を受け取 り自分の鞄の中に入れた。
これを探していたのは、本当に事実を確信したかったからなのか?
「お前、前から・・・、経験あったのか?」
「主語を言えや」
「だから、過去に行ったりしたことあったのかって聞いているんだろ」
「ないよ」
「あっさり言うなあ」
学校から真っ直ぐ帰れば、直線距離で十分とかからない航太の住んでいる寺へわざと遠回りして帰ろうと言い出したのは瑞樹だった。そろそろ、他の学生たちが登校してくる時間だった。
こんな状況の二人を見つけられたら、又何を言われるか楽に想像が出来る。わざと人目の付かない場所を選んで歩いた。どちらが言い出した訳でもなく。
校舎の裏手には長い土手が連なり、下方は川が流れていた。川縁まで降りた二人は、並んで歩いた。
「・・・・、よく分かったな、オレが彼処にいるって」
「とりあえず、行ったらいただけや」
「来るって、思ってたよ」
泥の付いた顔をしているくせに、よくも言えたもんだ。
「どっから来るんだ?その自信は?呆れてものも言えんわ」
「来る気がしていたんだよ」
心地いい、六月の風。降っては止む梅雨時の会間晴れた雲が白い。
瑞樹は、オレのこと何だと思っているんだろう。
「お前は、思ったこと無い?」
「だから~、主語を言え!」
「過去をもう一度やり直しできたらいいなって、さ」
また、しょ~もない事を考えている、こいつ。
「オレが念じて、お前とシンクロすれば、何処でも行けるって考えねぇ?」
「よく、そんなしょうもない事考えるな。あれはすげ~疲れるんだぜ。お前疲れねぇの?」
「全然」
やっぱ、むちゃ腹立つわ!この男!
「ねえ、もう一度試そう。あれが偶然だったのか」
こいつ、本気で言ってるんだろうか。何処がこいつの本心なんだろう。何処まで本気で、何処から冗談なんだか、区別がつかない。
「お前!厭だったんちゃうんか?」
「今度はお前の過去の世界へ、オレを連れて行ってみろ!」
掴みかかって来る瑞樹から逃れとうとして、足を滑らせた。瑞樹は航太に掴まった儘の形で航太は瑞樹にのし掛かられた様な格好で後頭部から地面へと落ちて行った。
航太の腕や額は、砂利や石で皮膚は削られて、各部に痛みが走った。
「っ、ざけんな!どあほ!」
オレの上にのし掛かっている瑞樹を払いのけた。過去になんて行きたくないわ。
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